目的のためなら仲間の命を捨てることも厭わない非情な一面を持ちながら部下たちからは深く信頼されている調査兵団13代団長エルヴィン・スミス。
公式が行った第三回人気投票ではエレンやリヴァイを抜いて第1位になるなど作品を代表する存在で物語中盤までの討伐に最も貢献した兵士の一人でしょう。
今回はエルヴィン・スミスについて解説したいと思います。
またウォール・マリア奪還作戦でリヴァイに
と言われた際
と言ったエルヴィンの心情や作中で描かれたエルヴィンとアルミンの対比描写についても考察しているのでぜひ最後までお楽しみください。
※当記事はネタバレを含みますのでご注意ください。
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1.エルヴィン・スミス
調査兵団13代団長のエルヴィンは類まれなる頭脳と冷静な判断力を持ちリヴァイをはじめとする多くの部下から考えを理解せずともついていくと言われるほど絶大な信頼がありました。
任務への熱い情熱を感じさせる一方目的達成に手段を選ばない非情さを併せ持ちゴロツキであったリヴァイや巨人能力が発覚したエレンなどを自分の管理下に迎える柔軟さも魅力です。
しかしエルヴィンの選択は必ず成果を挙げる一方で同時に多くの兵士を失う決断であることも多くその判断は時に悪魔とも称されるほど冷酷な場合もあります。
作中で巨人が人間である可能性という新しい真実が明らかになった際
と嘆くリヴァイに対し
と自分の行った行動に一切後悔しないエルヴィンが印象に残っている人も多いのではないでしょうか。
目的のためなら時に人命すら捨てることができる彼を象徴する場面です。
また作中でアルミンが
いるとすればその人はきっと大事な物を捨てることができる人だ」
と語っていますが作中でのエルヴィンの行動はまさにその言葉を体現し続けているといえるでしょう。
あらためて作中でのエルヴィンの実績を振り返ってみるといかに彼が信念を突き通し一貫した行動を取っているのかが分かります。
まずは主人公エレンが初めて調査兵団と行動を共にする第57回壁外調査での女型の巨人戦です。
第57回壁外調査は建前上、外壁調査とウォール・マリア奪還作戦に向けたシガンシナ区までの経路確保を目的に行われたものです。
しかしエルヴィンにはエレンが巨人化したことや研究目的で捕獲していた巨人が殺されたことなどを背景に最初に壁を破壊した超大型巨人や鎧の巨人も人間である可能性を前提とした敵のあぶり出し作戦という裏の目的がありました。
この作戦は突如現れた女型の巨人に対し迅速な捕獲行動を取れた代わりに作戦を知らされていなかった兵士を含め多くの犠牲者を出しました。
作戦中ジャンが
とエルヴィンを非難しますがエルヴィンの指示内容から誰よりも早く彼の真意に辿り着いていたアルミンはジャンに対し
と言いました。
そしてアルミンはエルヴィンは
を切り捨て
を選択した判断は間違っていないと続けます。
アルミンはこの時点でエルヴィンが目的のために大切なものを捨てられる人間でありかつそれを覚悟で来ている人間と理解していたのです。
これのエルヴィンの判断や覚悟は後のアルミンに大きく影響し後にエレンを救うため人間性を捨ててベルトルトと交渉したり自らの命を犠牲にした陽動作戦を提案したりとアルミンはエルヴィン同様目的と大切なものの取捨選択を何度も強いられることになります。
超大型巨人と鎧の巨人がベルトルトとライナーであることが判明した後彼らに連れ去られたエレンの奪還作戦でもエルヴィンの一貫した信念を痛感させられます。
エルヴィンはエレン奪還のために巨人たちを利用した奇襲作戦を行います。
作戦中エルヴィンは巨人によって捕食され腕を失ってしまいますがそれでもなお兵士たちに
と鼓舞し彼らの士気を保とうとします。
これは目的遂行のため捨てる大切なものの中にはエルヴィン自身の命さえ含まれているという描写でありエルヴィンの目的遂行に対する情熱とある種の狂気を感じさせる場面でした。
残酷な結末になろうとも目的のためには大切な何かを捨てなくてはならないそんな決断を迫られる登場人物は作中に多く登場します。
中でもエルヴィンが特別なのは調査兵団という集団全体でその役目を任されたという点で彼にのしかかる責任は他の者たちの比ではありません。
ではいったいエルヴィンはなぜ確固たる信念のもと悪魔とまでいわれる決断を続けられるのでしょうか。
それはエルヴィンが子供の頃に体験した父の死と彼の本当の目的が深く関わっています。
2.エルヴィンの真の目的
エルヴィンは一体どんな目的によって突き動かされていたのでしょうか。
それは彼自身が招いた父との悲惨な過去の影響が大きいです。
エルヴィンの父親は学校の教師でありエルヴィン自身も教え子として父の授業を受けていました。
勤勉で真面目なエルヴィンはある時父が授業で教えてくれた
という国政が配布した教えに対し誰がそれを確認したのだろうという素朴な疑問を抱きます。
授業中それを父に尋ねると父はその場では何も語らず帰宅後エルヴィンにだけ
「壁内人類は王が統治しやすいように
記憶を改竄されている」
という仮説を話します。
エルヴィンにとってその仮説はとても刺激的かつ魅力的なものでした。
エルヴィンは友人たちにその仮説を離してしまった結果危険な思想を持っているとして父は王政によって殺されてしまいます。
これ以降エルヴィンは父の仮説を立証することを自らの生きる目的をし調査兵団の団長として仲間を7に送るという残酷な決断を続けることができたのです。
ラガコ村の住人が巨人に変わってしまった可能性があるという報告が入った時その正体が人間と分かって周囲が落ち込んでいる中エルヴィンだけが笑っている理由も父親の仮説が正しかったのだと確信を得たためだったんですね。
エルヴィンのこの目的は調査兵団という組織の目的そのものでもありそういった意味でエルヴィンは団長になるべくしてなったと言えるでしょう。
時に非情とも取れる判断をし続けられたのはただ人類の為という利他的なものではなく自身の目的と一致していたからこそ成し遂げられたことでもあったわけです。
しかし村が調査兵団としてのエルヴィンの行動と信念は彼が最期を迎える直前に揺らぐことになります。
王政編にて調査兵団は中央政府との戦いの中でエレンの父が壁外から来た人間である可能性が高いと結論付けます。
調査兵団はエレン宅の地下室にある情報と巨人に奪われた領地を再び奪還するためエレンの硬質化能力を使ってウォール・マリア最終奪還作戦を決行することになります。
エルヴィンとリヴァイは新兵たちと共に獣の巨人・ジークとの戦闘になりエルヴィンは絶体絶命の中ジークに一矢報いる作戦を思いつきます。
それは自分と新兵たちが獣の巨人に向かっていき硝煙弾を使ってリヴァイの奇襲を手助けするという特攻作戦でした。
しかしここでエルヴィンは初めて自分の選択について大きく悩むことになります。
なぜなら自身の命をも投げ出すこの作戦が成功したとしてもエルヴィンはエレンの地下室に行くことはできず目の前にある父の仮説が正しかったのかどうかということを確認できないからだです。
これまでエルヴィンと調査兵団の目的は常に一致してきました。
調査兵団の目的を遂行し続けることが父の仮説を立証する唯一の方法でありだからこそエルヴィンは常に正しい判断ができていたのです。
しかし自らを犠牲にジークを倒す調査兵団の特攻作戦は父の仮説の正当性を確認したいというエルヴィン個人の目的と相反するものでした。
どんな難しい決断もしてきたエルヴィンが自分の最期を目の前にして正しい選択に躊躇したのです。
そしてそんなエルヴィンの代わりに俺は選ぶぞと最後の選択をしたのはリヴァイでした。
3.リヴァイとの絆
そもそもリヴァイにとってエルヴィンはどういう存在だったのでしょうか。
諫山先生はリヴァイがエルヴィンを信頼している理由について
自分が想像もしなかった利他的な行動と捉えて自分自身の生きる使命としたから」
とお答えています。
つまりリヴァイは
ことに重きを置きそのためには自己さえ捨てて冷静な判断をする団長という人物像をエルヴィンに求めていました。
2人の出会いを描いたOAD「悔いなき選択」でリヴァイは自らの迷いと誤った選択によって仲間を失ってしまいます。
正しい選択ができなかった自分を後悔するリヴァイにエルヴィンは
「一つの決断を次の決断の材料にして
はじめて意味を成す」
と助言します。
エルヴィンの言葉と仲間を失ったことでリヴァイは自分にいくら力があり信頼する仲間の選択をどれだけ信じても良い結果が得られないこともあると痛感します。
そしてエルヴィンには自分に見えていない何かがあると信じてリヴァイはエルヴィンを信頼することになります。
団長としての理想像をエルヴィンに重ねていたからこそウォール・マリア最終奪還作戦で自らの作戦に迷うエルヴィンを見てリヴァイは愕然としました。
それは失望ではなくたとえエルヴィンでさえ死を目前にすると自らの選択を迷ってしまうただの人間であることを改めて思い知ったからです。
諫山先生は
とインタビューで語っています。
ここで言うエルヴィンの人間としての本性は世界の謎を知りたい父の仮説を立証したいという利己的な目的への欲求でした。
そしてこれまでひたすらに極限の選択をしてきたエルヴィンは初めて
と吐露しリヴァイの顔を見ます。
迷いからなすべき決断ができないエルヴィンはリヴァイに後押ししてほしかったのではないでしょうか。
そして全てを察したリヴァイは
「夢を諦めて死んでくれ」
と後押しし結果としてウォール・マリア奪還作戦は成功しました。
というリヴァイにエルヴィンは
と言いますがこれはするべき正しい決断を全うさせてくれたリヴァイにエルヴィンは感謝したのだと思います。
4.エルヴィンとアルミンの対比
ウォール・マリア奪還作戦でジークたちを追い払った後作戦遂行のために瀕死状態になったエルヴィンとアルミン。
巨人化の薬で一時的に巨人化させ超大型巨人であるベルトルトを捕食させることでどちらか片方だけを生き返らせることができるのですがその選択をリヴァイが迫られることになります。
結果としてリヴァイは長年連れ添ったエルヴィンではなくアルミンを生き返らせます。
この選択に至った理由はエルヴィンとアルミンが実はとても近い存在でありなおかつ互いを対比するような関係でもあったことが挙げられます。
例えばエルヴィンとアルミンはそれぞれ夢がありました。
エルヴィンの夢は父の仮説を立証することでしたがこれには父を殺してしまったことに対する後悔に似た暗い気持ちが原動力の一つになっていました。
しかしアルミンの抱いていた
という夢は純粋でひたすらに前向きなものでエルヴィンの夢のように過去に縛られたものではなく未来への希望そのものでした。
エルヴィンは夢を諦め切れずリヴァイに選択を委ねましたがアルミンは逆に自分の夢をエレンに託し自らが死ぬ決断をします。
夢自体の性質もそれに対する考え方も二人は真逆であり対比的な関係になっているのが分かります。
リヴァイはどちらかを生かす場面でそれに気づき同時に王政編でケニーから言われた
という言葉を思い出します。
この時リヴァイがこれらの感情をどのように結びつけたのかは様々な考察がありますがエルヴィンに注射を打とうとした時エルヴィンのとある行動がきっかけでアルミンを生かすことを決めるのです。
その行動とは瀕死のエルヴィンが無意識に注射を打とうとするリヴァイの手を払いのけ
……やって調べたんですか?」
とつぶやいたことです。
この時エルヴィンは子供の頃に教室で手を上げて教師である父に質問する記憶を見ていました。
その姿を見たリヴァイは残酷な世界で人類のため悪魔のような決断をひたすらし続けたエルヴィンを静かに眠らせてあげようと考えました。
リヴァイはエルヴィンを残酷な世界から解放してあげたのです。
その後生き残ったアルミンは「海を見る」という夢を叶えます。
しかしアルミンが思い描いていた自由は海の向こうには無く巨人を送り込んできたマーレという巨大な敵がいるという現実と対峙することになりますよね。
これも真実を知りたいという夢を描きながらそれを諦めたエルヴィンと対比する構図になっているのではないでしょうか。
一見完璧に見えるエルヴィンですが諫山先生はエルヴィンについて夢追う子供の自分と責任ある大人としての自分に揺れ動くキャラとおっしゃっています。
事実こうしてストーリー順にエルヴィンという人物を考えてみるとそんな彼の危うさに気づかされより一層魅力的に見えてきますよね。
まとめ
ウォール・マリア最終奪還作戦でエルヴィンが死んだ時、大きな衝撃を受けましたが彼の残した信念や成し遂げたあらゆる功績が物語後半の話を華やかに彩ったのだと思います。
エルヴィンとリヴァイの絆が大好きすぎる!
エルヴィンの死が衝撃すぎた!
と思った人はまた次の記事でお会いしましょう。
今回は以上です。
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